2019.05.22
ポプラケアプランセンター主催 研修会 《看取り》
テーマ◇「看取り」~人生の最終段階を支えるために~
講師◇社会福祉法人関寿会 特別養護老人ホームはちぶせの里施設長 中野穣氏
日時◇2019年5月22日 場所◇豊中市立青年の家いぶき
「高齢化社会」「終活」など話題に上がることも多くなってきた「人生の最終段階」について。
今後世の中の仕組み的にも増えていくと予想される、施設や自宅での「看取り」について、兵庫県養父市を拠点に異職種も含めたネットワークづくりにも積極的に取り組んでおられる、社会福祉法人関寿会 特別養護老人ホームはちぶせの里 施設長の中野穣氏をお招きし、医療福祉介護従事者の方々約90名とともにお話を伺いました。
厚生省が2007年に発行した「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」に、死に貧した患者に対する治療についての指針があります。
●本人・家族・医療チームによってきちんとした議論が行われていれば、治療の中止を含めた判断を行える。
●その場合でも、患者本人の苦痛を和らげるような処置は可能な限り行える。
~いざ我が身・家族となると「迷い」が出てきてしまうもの~
苦痛なく穏やかに最期を過ごしたいと考える人と、苦痛があったとしても最期まで治療に賭けたいと考える人とでは、大きく選択は変わってきます。
現状、最終段階でご本人が治療に関して意思表示ができるケースは多く見積もっても全体の約30%なのだそうです。
残り70%は、家族が重荷とともに選択を迫られるのです。
自分自身は苦痛を伴ったり、不必要かもしれない治療をしたくないと考える人も、「自分の家族がそうなった時どうしますか」と問われると、言葉に詰まってしまうそうです。大切な家族であればこそ、一分一秒でも長く生きてほしいと願うからです。それほどに、他者の生き方、死に方を判断することは誰にとっても困難なことなのです。
人生では様々な「選択」を重ねてきても、最大の出来事ともいえる自分の死については、終末期であっても自由に選ぶことはできません。倫理論から踏み出せず、日本では「死に方」についての議論はタブー視されているということもあり曖昧なまま。海外のように終末期の「尊厳死」が法的に認められるという状況にはないのです。
だからこそ重要な、「看取り」とはどういうものか、ご家族のみならず、同業者・異職種間でもコミュニケーションをとり、正しい情報を共有していってもらいたいとのことでした。
詳細について「ご本人」の意思が明示されている上で、「ご本人」「ご家族(代理人)」「医療チーム」による事前の話し合い、情報の共有と合意が大切。ご本人の意思が明確でない場合は、医療・ケアチームとして、選択肢のメリット・デメリットを十分に説明した上で、ご本人にとって最善の選択肢は何なのか、ご家族と十分に話し合った上で結論を出し、共に考え、悩むご家族が重荷を感じながらも出した結論を、「それが正解だったんだ」と後押しすることも必要になるそうです。
理想の「看取り」とは… ~草や木と同じ、枯れるように逝くこと~
死も人の大切な営みの一つ。身体はどうすれば楽に逝けるのかを知っていて、その時が来たら人の身体は楽に逝けるよう、自然に死の準備をはじめるそうです。
デリケートなテーマではありますが、我々の業種にとってはとても身近で重要なこと。お集まりの約90名の方々は真剣にメモを取っておられました。
テーブルごとのチームで話し合う時間もあり、お互いの所属・職種を越えて様々な意見交換ができたようです。
中野講師も「時間が足りない!」とおっしゃっていましたが、またこのテーマでお話を伺いたく思います。